銀河 | 鰹節の削り場

銀河

 今日は天気が良い。ケンタウルス座をまじまじと見ることができる。全く持って良い日だ。星は良い。邪心を洗い流してくれる。
 ここ最近、都会では星があまり見られない。別に排気ガスが溜まっているからというわけではないと思うが、明る過ぎるのだ。それにより、星達は自分らよりも強い光を放つそれらに恥じて、姿を見せなくなる。
 悲しいことにこれは事実であり私にとっては非常に耐え難いことだ。星座は古人が残した遺産であり、それによって名付けられた星達は嬉しそうに輝きを増すのだ。これは私の単なる気のせいではなく、確かなことである。彼らは他所に負けじと輝き合うのであって地上で同じような光を生んでもらっては困るのだ。下品極まりない広告光はいつしか街を埋め、新たな発見の芽を拒んでいるかのようだ。
 私はそれが許せなかった。だから、この光で溢れる人間にとって便利な街が非常に憎かった。ここに住んでいる者どもの目は、どれもこれも節穴ばかりで、審美眼を持っていない故、自分らばかりを着飾って大切な物に対する本質を失っているのだ。
 しかし私も幼稚なまでである。死にゆく星々をろくに眺めることもせず、ただ稼ぎのためだと必死に体をいたずき、そして好き勝手に独占欲を撒き散らすのが幸福であるとばかりに考えていた。全くこの街の伝染病はよく広まる。とても嫌らしい病だ。それも純粋無垢だった人まで、金の亡者となってしまう。改めて思うに酷いものである。
 いやあ、それにしても、今日の星はあまりに綺麗過ぎる。そしてそよ風があまりにも良い塩梅に吹いてくる。今日はもしかすると何かあるかもしれないなと、一筋の流星が空を切った。
 高揚感に浸り、朱に染まったスコップを急ぐ手がまた一段と早まった。