080518 | 鰹節の削り場

080518

 Ⅶ

 一方のトラック運転手は、僕らのなかまたちこと東京電力の使いこと電柱に撃沈。前方はまるでアルミ缶を思い切り踏みつけたかのようにぺったんこに潰れ、運転手はおろか、どこら辺にドアがあり、どこら辺がタイヤかバンパーかといったおよそ判断のつかないほど綺麗に圧縮され、あいにく解凍ソフトを持ち合わせていなかったので僕にはどうすることはできなかった。トラック自体くっきりと電柱の形だけをくっきりと跡に残し、灰色のボディーを赤黒くペイントして御洒落を気取った。全くあれだけの衝撃にびくともしないとは、つくづく日本の建築業のハイクオリティさにため息がつくばかりだと感心する今日この頃。そう言っている場合ではなかったのに今先ほど我に返ったところで。
「おい」
「ひ、ひぃん」
そう一声掛けただけなのだが、もはや全身性感帯に開発されたたばこ番の娘は、またもやびくんと反動して身体でできるだけ大きく弧を表現し、噴く潮の勢いでついにジーンズに穴を開けていた。彼女はなんとか残り少ない正気を保とうとしたか、壁にぴったりと張り付き男の物を愛撫するかのように撫で回していたベロを無理矢理にも引き剥がし、汗と潮と愛液にまみれた身体に鞭を打って、震える手でマルボロの箱に手を掛けた。
「ふはぁ、んんはんひゃくえんですうァァッ」などと、俺が器用に裸体の女を女王様抱っこしてポケットからおもむろに千円札を取り出し、未だに快楽に打ち勝つことのできないこの淫乱な小娘の掌にのせたただそれだの行為だと言うのに、再度大量の潮をしっちゃかめっちゃか噴きはじめ、僕の顔にも度々独特の臭気を放つミネラルウォーターがバケツをひっくり返したような勢いで掛かった。雌豚は五十万ボルトのスタンガンを長時間当てられたかのようにさきほどから小刻みに震えており、黒目を一切剥かず、長細くてらてらと輝く薄ピンク色の舌は、収縮を忘れたかのように口外にずっとはみ出しており、少し指先が触れただけでも昇天するだろう。
「戯れ言はいいからちゃっちゃと済ませちゃって」と僕が一声発するが、ダンスフラワーと化した豚にはそれが起爆剤となり、ぶりゃりゃりゃりゃと破裂音を響かせると、海に近いブルーをしていたジーンズの後背部は瞬く間にパンパンに膨れ上がり、鼻が曲がるような動物の臭いを放っていた。あまりに臭いもんで、三軒先のはす向かいにある花屋でさえ、水やりをしていた女店員を失神させ、店内全ての植物をものの見事にセピア色に染め上げた。オンリーワンを誇っていた花達でさえ自ら枯れるという自虐行為を選んだほどの臭いである。炎天下である現在、その臭いは風に乗って遠い街にまで流れ、第三の災害として車が歩道に乗り込むやら、電車がその臭いを避けようと意図的に線路を逸脱しようとするやら、臭気によって旅客機のエンジン経路がやられて三百人の尊い命が水の泡と消えるやら、主に交通機関を通して大パニックである。その臭気がせめて核弾頭にまで届いていたら……。