080519 | 鰹節の削り場

080519

 Ⅷ

 もはや硬貨の重さにまで耐えられなくなったまだ白く美しさを保つ娘のか細い手は、ぶるぶると百円硬貨二枚と五百円硬貨をやっとこさレジスター前まで持ち上げ、非力ながら手をひっくり返して硬貨を転がした。その営業態度にいささか怒りが込みあがったが、あまり年下の娘を怒鳴りたくはなかったので、「ありがとう」と一言告げた後、そのだらしなく突き出した娘の掌を取って裏返し、欧米式に手の甲に軽くキスをした。途端、この娘は電撃が走ったごとくその手を唇から突き放し、大きく後ろにふんぞり返り、床に渇いた打撲音と共に激しく打ち付ける。果たしてそれが潮か尿か分からないような、ホースの口先を軽く潰して勢い付かせたような水圧で娘の性器から狂ったようにダムが放水をしており、おかげで彼女が噴いた跡には、掛けられた部分に正確な穴が開けられ、もはやウォーターカッターの役割を果たし、街路樹の胴体を真っ二つにし、通りすがる犬猫を三枚に下ろし、代官山を気取った女やスイーツを必死で貪る豚や就職難で苦しむ若き日の哲学者など全て容赦なく胴体を覗かせていった。そして尽きた頃には娘は完全に白目のみを覗かせ、口から多量の泡を吐き出して、地面を背にクレイジーなダンスを披露してくれた。その様子はまるで糸の切れたマリオネットをしっちゃかめっちゃかこねくり回したかのように適当で狂気満ちていて、やがて体力が切れ、体中の水分を失った頃には、娘は既に息を引き取り、その寝顔は元の美しさを保っていた。